今回の御題は、前回行った資料写真撮影考察の続き。『応用編』だ。
なお、前回同様これも我々が独自に実践している事であり、アイマジック社公式の撮影方法では無いので、その点についてはご了承願いたい。
さて、本題に入るが、VRM用の資料写真に必要な写真は
・両側面
・屋上機器
・正面
・細部
・運転台周り
この5つの部位の写真である事は前回述べた通りである。
以下、この資料写真には必須とされる上記の部位を便宜上『5つ部位』と呼ぶことにする。
しかし、たとえ同一形式の車輌の『5つ部位』を制覇したとしてもだ。
右側側面はA編成、左側はB編成、屋上はC編成といった具合に、別々の編成の車輌をバラバラに撮ってしまったのでは資料価値は下がってしまう。
少なくとも、これだとアイマジック社側は『5つ部位』を全て撮影したとは認定しない可能性が高いと思われる。
何故か。
アイマジック社はかつて、公式会議室のリクエスト板にこんな事を書いている。
鉄道車両は、使用される場所、製造時期、製造工場などにより同一形式でも大きな違いが生じることがあります。
資料不足により、こうした変化をとらえきれず製品化が困難になる場合があります。
以上、アイマジック社公式掲示板の以下の書き込みより引用。
http://moebiuslink.com/vrm5bbs/viewtopic.php?f=6&t=4#p13
これがどういう事か、都電荒川線の7000形を例に説明しよう。
上:7018号車 下:7023号車
どちらもラッピングの無いオリジナルカラーの7000形で、同じ側面を写したのだが、この2両には床下機器に違いがある。
それは何か。
答えは『丸で囲った部分の抵抗器?の数と形が違う』だ。
このように同じ形式の車輌でも、細部が異なっている場合があるので油断は禁物だ。
なので、VRM用の資料写真を撮影するに当たっては……
・同一編成(単行車の場合は同一車輌)の『5つ部位』を撮影する事を目指す
これを目標に撮影を行うのが良いだろう。
実際、我々は資料撮影に赴く時は、基本的にこれを目標に撮影を行っている。
また、同一形式の車輌の違いは、時間軸によって生じる場合がある。
要するに、時が経つにつれて改造等によって車輌に差異が生じてくるのだ。
アイマジック社は、公式掲示板で次のように述べていた。
鉄道車両は、製造されたらそれで完成とはならず、運用に合わせて改良が加えられています。
資料についても、特定の日時を切り取るだけでなく、時間軸方向も観察することで、いろいろと幅が広がります。
以上、アイマジック社公式掲示板の以下の書き込みより引用。
http://moebiuslink.com/vrm5bbs/viewtopic.php?f=5&t=89&start=160#p1251
要するに、鉄道車輌の外観はその時々によって変化する……アイマジック社はそう言いたいと思われるが、
この『時系列による車輌外観の変化』の具体例を、またまた都電を例に説明しよう。
例1.都電8800形8802号車の場合
↑2012年2月時点の8802号
これは、今年の2月に撮影した都電8800形の8802号だ。
この時は広告も何も無く、他の8800形と(色以外は)変わりはなかったが……
↑2012年5月末時点の8802号
ほぼ三ヶ月ぶりに撮影してみると、2月の時点では無かった広告ラッピングが側面に張り付けられていた。
この手のラッピング貼り付けや塗装変更は、誰が見ても良く分かることなのであるが……
例2.都電8500形8501号の場合
↑2012年2月時点の8501号
撮影時点では、荒川線唯一の非LED方向幕を掲げていた8501号。
他の車輌のLED方向幕の撮影に苦労するなか、唯一すんなり方向幕を撮影させてくれたありがたい存在であった。
↑2012年5月末時点の8501号
しかし、そんな8501号も時代の流れには逆らえず、5月末の時点では他の車輌と同様なLED幕に変わっていた。
(LED幕部分に架線か被ってしまっていすが、ご容赦願いたい)
撮影した時は『何か違和感があるな、この8501号』と思ってたが、撮影した写真をよく眺めていたら幕が変わっていてびっくりした記憶がある。
あまり鉄道に興味の無い方は、この変化に気がつかない可能性が少なからずある。
と、こんな具合で、時間を置いてしまうと同じ形式の車輌でも塗装変更や一部部品の変更など、外観に差異が出てきてしまう可能性がある。
実はアイマジック社はこの手の『時間経過による外観変更』に非常に敏感で、既に発売した車輌に、実車に新しく取りけられた細かい部品(スカートや雨樋など)を新たに取り付けたり、オプションで取り付けられるようにする事もある。
時には、E217系(横須賀線の車輌)のように『機器更新車』としてわざわざ新しく開発する事さえある。
(ちなみにこの『機器更新車』タイプのE217系は、VRMOnlineだと普通のE217系を持っていても、使用するには別途3960円必要)
アイマジック社にとってみれば、同じ形式の車輌でも時間が経って外観が変化してしまった車輌はもはや『別の形式』なのだろう。
話を戻すが、要するにめでたく同一編成の『5つ部位』の撮影に成功しても、各部位の撮影時期の間が空いてしまって外観に変化が生じてしまったら『アウト』という事だ。
この『時間軸による鉄道車輌の外観変化』に対し、対抗する手段は一つだけある。
その手段とは……
・できるだけ短期間に(可能であればその日のうちに)、『5つ部位』の撮影を済ませておく
いくら鉄道車輌が運用に合わせて改良が加えられていると言っても、終点から折り返した時に外観が変わるなどという事は(事故でもない限りは)あり得ないし、日を改めるにしても1日や2日で外観が変わることは無いはずだ。
鉄道車輌の外観が変わるのはまず検査入場した時だと思われるので、遅くとも標的の車輌が検査入場する前には『5つ部位』の撮影を済ませておきたい。
出来ればその日に全て撮影出来るのが理想だが、それが無理な場合も多々あるので、その場合でもなるべく早いうちに撮影を済ませた方が良いだろう。
以上、VRM資料写真撮影『応用編』、長々と書いてきたがまとめると
・製品化して欲しい車輌形式があれば、まずは同一編成(同一車輌)の両側面・屋上・前面・細部・運転台周り(5つ部位)の撮影を目指すのが上策
・そして一度狙った編成(車輌)は余り時間を置かず、遅くとも検査入場前までに撮影すると良い
この2点につきる。
だが、この撮影方針はあくまで一例である。
実際、一日で同一車輌(同一編成)の両側面・屋上・前面・細部・運転台全てを撮影するのは路線にもよるがかなり難しいし、実際我々も標的にした全ての車輌でこれを成功させるのは中々できぬ。
だが、例え撮影出来なかった部位があったり、都合で撮影した時期がずれてしまったとしてもそれはそれでアイマジック社にとっては貴重な資料になると思うので、投稿してみて損は無いだろう。
以上で今回の講釈を終わる。
それでは、次回の講釈はネタが固まり次第、流す予定だ。
[2回]
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