今回のテーマは、タイトル通り『車輌側面の定義』についてだ。
第一回目から話している通り、VRMの資料写真には車輌側面の写真が必要だが……
側面写真の資料を投稿する際、撮影した写真がどっちの側面かを定義しておく必要もある。
そうしないと、どちらの向きの側面写真なのかが分からず、アイマジック社の中の人が混乱する危険性があるからな。
もっとも、一口に『車輌側面の定義』といっても、いくつかの方法がある。
それを、順番に紹介しておこう。
1.海側・山側方式
この業界(VRM資料写真撮影業界)では最もポピュラーな定義方法。
上図のように、海側を向いている側面を『海側側面』、山側を向いている側面を『山側側面』と定義する。
我々だけでなく、他のVRMユーザーの方やアイマジック社の中の人も使っている方法である。
但し、この方式はポピュラーな定義方法とはいっても、決して万能の定義方法では無い。
内陸部を走る路線や、デルタ線がある等して車輌の向きが一定では無い路線(都電荒川線など)、
また、レアケースではあるが両側面が海側を向くケース(函館市電)などにはこの方式は通用しない。
2. 東西南北方式
上図のように車輌・または路線の東西南北の方向から、側面の定義を行う方法。
これも、他のユーザーの方で使用される方も見られる。
もっとも、路線の向きが途中で変わる場合、車輌の方向が変わってしまうので、現役の路線に使うには余り使い勝手の良い方法とはいえない。
但し、駅に止まっている車輌・廃車されてもう動くことの無い車輌相手に使うにはこの方式も有効である。
3.路線定義方式
ここから先は現在の所、我々のみが使用している方式……つまりオリジナルの定義方法になる。
この『路線定義方式』は、標的とする路線の左右を予め決めておいて、そこから車輌の左右を決定する方式である。
この説明だけだと少し分かりづらいと思うので、過去投稿した資料写真のResumeから、具体例を引っ張り出してこよう。
(例)岡山電気軌道東山本線の場合
基本の形はこの通り。
その路線の終端駅とそれをつなぐ線を書いておき、上のように両側面の定義を行う。
(例2)福井鉄道福武線の場合
これは応用編。通称『ヒゲ線』のある福井鉄道福武線を撮影したとき、添付のResumeに書いたもの。
ヒゲ線部分で撮影した資料写真もあったため、このような形にした。
なお、話はそれる福井駅前のヒゲ線部分は比較的短時間で両側面の資料が撮影出来(車に被られなければ)、撮影時には重宝した記憶がある。
この方式のメリットは、内陸部の路線や、車輌の前後が分かりづらい車輌の側面定義がやりやすい点にある。
ただ、この方式にも弱点はあり、都電荒川線のように車輌の向きが一定ではない路線には通用しない。
4.編成表方式
いままでの3方式は路線を軸に定義を行っていた方式であるが、ここから先は車輌側を軸に側面定義を行う方式を紹介する。
この方法は車輌の編成表に基づき、車輌の定義を行う方式だ。
これも具体例を見てみよう。
(例)函館市電9600形(らっくる号)の場合
基本的に2両以上の編成の電車は、一部例外はあるかも知れないがそう滅多に編成組み換えを行う事は無い。
これを利用して、上のように左右の定義を行う。
デルタ線があるなどして車輌の向きが一定では無く、路線を軸にした定義方式では対応出来ない場合でも、この方式であれば対応可能だ。
ただし、この方式が有効なのは『固定編成を組んだ電車』なので、1両単位での分割・併合が良く行われる気動車や客車相手には不向きな方法である。
また、あたりまえだが電車でも単車の路面電車のような、1両編成の車輌の定義にも向いていない。
5.車輌部位本位方式
荒川車庫にデルタ線のある都電荒川線や、車庫にループ線のある札幌市電など、車輌の方向が一定では無いと分かっている路線で、1両編成の鉄道車輌を撮影する時に我々が使う手がこの方式。
具体例を挙げると……
(例)都電9000形・札幌市電の方向定義
車輌の前方・後方から特徴的な部位を探し出て前後の定義を行い、そこから左右の定義を行うのがこの『車輌部位本位方式』だ。
都電9000形(9002号)
札幌市電240形(241号)
例に挙げた都電9000形と札幌市電の場合、ご覧の通りどちらもパンタグラフの場所が一方の前面に寄っているので、パンタの位置を軸にして左右の定義を行った。
(この方式を使う場合、我々は前面の方も『パンタ有側』『無し側』で定義している)
もっとも、札幌市電の場合、公式には『1』側前面と『2側』前面と定義しているようだ。(札幌市電の場合、パンタのある方が『1側』の前面の様子)。
もっとも、そう言って分かるのは札幌市電の中の方か、札幌市電を知り尽くした専門家のマニアくらいなものなので、資料写真での方向定義に使用するのはお勧めしかねる。
なお、都電にはパンタグラフが中央にあり、前後左右の定義がより困難な車輌も存在する。
そういう場合は……
7000形の場合はクーラーを基準に位置取りをし……
花100形の場合は相当見難いと思うが、写真の『アンテナ』を軸に前後左右の定義を行った。
(花100形の場合、他に『軸』になりそうな部位が無かったので)
そして一番困るのがこの都電6000形。
前後の定義付けに使えそうな部位が見当たらず、もし写真の6086号が本線上を復活走行することになった場合にどうするのか……
我々としても未だに答えが出ていない。
以上、今回は『車輌側面の定義』について書き綴ってみた。
最後に、我々から車輌側面の資料写真撮影について、一つだけアドバイスを。
それは『撮影予定路線に、デルタ線やループ線など、車輌方向を変えるような線路が無いかどうか、事前に確認する事』だ。
本線上だけでなく、引込み線・車庫などの配線もグーグルマップなどでチェックして置く事をお勧めしておく。
そして、方向転換の可能性の有無を確認してから、実際の資料写真撮影にいくといいだろう。
もし目的の路線が方向転換の可能性がある路線と判明した場合、両側面の写真だけは同日中に撮影しておく事を強くお勧めする。
さもないと……
(都電9000形9001号 2012年5月20日、飛鳥山交差点にて撮影)
(都電9000形9001号 2012年5月30日、上の写真とは逆方向から撮影。
上の写真とは床下機器の構造が一緒なので、同じ側面を写してしまっている)
両方の側面を押さえたと思ったのに、実は同じ側面を撮影していた……
なんて悲劇も起こるからな。
撮影時にはくれぐれも、用心されたし。
[2回]
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